【2017年度版】ビザ規定変更からみる「シンガポールで働く」未来

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  • 2023年8月3日

みなさんはご存知でしょうか。以前より外国人労働者が多いことで有名なシンガポールでは

外国人労働者の締め出しが始まっていることを。

彼らに依存し経済成長を遂げてきた中、今、その体制が見つめ直されているのです。政府は異国民を全労働人口の3分の1以下に収める目標を発表し、その一環として、2017年よりまたもや就労ビザ取得の規制が強まりました。

 
なにが変わったの?




ビザタイプ:エンプロイメント・パス(EP)

変更点:最低給与設定(3,300シンガポールドル→3,600シンガポールドル

今回規制変更が行われたエンプロイメント・パス(EP)は、主に管理職(駐在員)や専門技術者に発行されます。この変更は、最低でもこの給与での仕事が無い場合はEPの取得が出来ないことを意味します。

もちろん他にも職種や経験・スキルに応じて申請する就労ビザ・労働許可の種類があります。必ず給与水準を満たさないからといって仕事が出来ないわけではありません。

 

どうして変わったの?


ではどうして今回の規制強化が行われたのでしょうか。まず、シンガポールの就職市場の状況を見てみましょう。

アデコグループが2017年に発表した人材競争率の国際調査結果によると、シンガポールはスイスに次いで世界第2位です。順位の高さが人材の水準が高いことを表し、人材の獲得力や効果的な能力の活用、育成など多数面から総合的に判断された統計結果です。

先進国を象徴する一つの指標として、シンガポールの国際的地位を表しています。しかしながら、今までの発展や成長の裏側には外国人労働者に大きく依存していた背景があるのです

小さい国で資源も少ないため、研究施設や特許権登録といった知的財産を主力の一つとして、経済成長に成功しています。その結果、多い時で人口の4割を外国籍が占めるほどになりました。

ほんの数年前までは急成長の一途を担っていた外国人労働者。今ではその多さが仇となり、自国民の生産性や就業率の低下に繋がっています。今回の規制も自国民の働き口を守るために実施されたのでしょう。

働き口を守るメカニズム

まず、給与規定を設けることによって、外国人が応募できる就職先を限定することができます。基準より低い職種に外国人は就職できなくなり、国民の就職先が生まれてくるのです。その結果、国民の就職率の改善や技術の習得に繋がってきます。

また、外国籍の採用は企業側にとっても負担がかかる仕組みになっています。人件費高騰はもちろんのこと、外国人雇用税やビザ取得のサポートにかかるコストや労力も馬鹿にはなりません。その結果、採用側もより適当な人材を求めるようになります。外国人採用ポジションは競争が激化するでしょうし、一部の特殊な職種を除き、外国人の採用総数は減るのではないでしょうか。

 

どんな影響があるの?




直接的な影響を見てみると、現時点での取得者が更新申請をしても受理されない可能性があります。取得者だからといって有利になることはなく、更新のタイミングで基準を満たしていない場合は許可がでません。

さらに、たとえ給与水準が規定を満たしていても、キャリアや年齢を考慮し受理されない場合があると政府は公表しています。今回の変更で、間接的に自国民が出来る仕事の幅が広がったこともあり、外国人に頼る必要がないと判断されてしまうラインが高くなったのです。

 

今後はさらに厳しくなる!?


また、将来的には、キャリアアップの妨げになる可能性があります。今は影響がない若い世代でも、今後、管理職に昇格する時にビザが取れないなんていうケースが起こるかもしれません。

EPビザのほかにもSパスワークパーミット(WP)などの労働許可証があります。それぞれに発行数や賃金水準が定められています。今回の変更から予想されるに、それら就労ビザも規定強化が将来的に行われるかもしれません。基準が強まってくるのであればシンガポール就職自体のハードルが上がってくるのではないでしょうか。

失業率は2.1%と低水準を保ってはいますが、解雇者数は2009年のリーマンショック以降増えていて、自国民の採用が増えると相対的に外国人の失業率はより増加すると思われます。

 

まとめ


いかがでしたでしょうか。

現状や将来性を考えると、経験豊富な役職層には影響が薄いのに対し、今後を担う若い世代にとっては不安定かもしれません。もちろん物価水準やインフレなど生活に関するデータも無視できません。国際政治や国際経済のような万国共通の課題もあります。一概にシンガポールが劣っているわけではありませんが、「シンガポールで働く」未来を見つめ直す必要があるのかもしれません。